2024年1月31日、江田畜産はソフトバンク株式会社、およびTTDC(トヨタテクニカルディベロップメント株式会社、トヨタグループ)との3社共同で、スマート畜産の実証実験を開始した。ソフトバンクの公式プレスリリースとして正式に発表されたこの取り組みは、日本の畜産業にテクノロジーを本格導入する試みである。

20代の畜産会社が、なぜ大手と組めたのか

率直に言えば、江田畜産は創業数年の小さな会社である。ソフトバンクやトヨタグループのような日本を代表する企業と共同実証を行うには、通常であれば何年もの実績が必要だろう。

しかし、私たちには「変えたい」という明確な意思があった。日本の畜産業の平均年齢は70歳を超えている。高齢化、後継者不足、労働環境の厳しさ。これらの課題に対して、テクノロジーによる解決策を提示できるのは、デジタルネイティブ世代である私たちの強みだと考えていた。

ソフトバンクとTTDCが江田畜産に注目したのは、規模の大きさではなく、課題に対する当事者意識と、実装への具体的なビジョンがあったからだと理解している。

牛舎に入ったテクノロジー

今回の実証実験では、複数のテクノロジーを牛舎環境に導入した。

まず、IoTセンサーによる環境モニタリング。メタンガス、CO2濃度、温度、湿度をリアルタイムで計測し、牛舎内の環境データを可視化する。畜産業において、牛舎の環境管理は牛の健康と肉質に直結する要素であるにもかかわらず、これまで多くの農場では経験と感覚に頼ってきた領域だ。

さらに、赤外線カメラによる個体の体温モニタリング、360度カメラによる行動観察、音声認識技術を活用した鳴き声の分析も実施している。牛は体調の変化を鳴き声や行動で示すが、人間がそれを24時間監視し続けることは現実的ではない。テクノロジーがその役割を補完する。

畜産にテクノロジーを入れることは、効率化のためだけではない。牛をより深く理解するためだ。
―― 江田 友輝

畜産 × テクノロジーの未来

この実証実験の目的は、単にデータを集めることではない。集めたデータをもとに、飼育環境の最適化、疾病の早期発見、そして将来的には肉質の予測モデルの構築を目指している。

世界の畜産業では、すでにPrecision Livestock Farming(精密畜産)という概念が広がりつつある。ヨーロッパでは環境負荷の低減、アメリカでは生産効率の向上が主な動機だ。日本では、労働力不足への対応という切実な課題が、テクノロジー導入の最大の推進力になる。

プレスリリースが意味するもの

ソフトバンクの公式プレスリリースとして発表されたことは、この取り組みが実験段階を超え、事業としての可能性を認められたことを示している。

江田畜産は、和牛の飼育とブランド構築だけでなく、畜産業そのものの変革に取り組んでいる。テクノロジーは、その変革のための手段のひとつだ。宮崎の牛舎から始まったこの実証実験が、日本の畜産の新しい標準になることを、私たちは本気で目指している。


Eda Livestock Co., Ltd.
Miyazaki, Japan / 2024.01.31

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