2025年2月、農林水産省が実施する「輸出人材確保事業」に、江田畜産が採択された。農水省の公式サイトには、事業採択企業として江田畜産の事例紹介が掲載されている。
この事業は、日本の農林水産物・食品の輸出拡大を担う人材の確保・育成を目的としたものだ。国の「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」のもと、輸出に取り組む事業者が、必要な人材を確保するための支援を受けることができる。
なぜ畜産の輸出に人材が必要なのか
和牛の輸出は、生きた動物を育て、屠畜し、加工し、検疫を通し、国際物流で海外に届け、現地のバイヤーと商談する ―― という、極めて多くの専門性が求められる事業だ。生産だけでなく、輸出規制への対応、各国の衛生基準のクリア、貿易実務、国際営業、ブランディング。これらを一貫してこなせる人材は、日本の畜産業界にはほとんど存在しない。
多くの畜産農家が、輸出に関心を持ちながらも踏み出せない理由はここにある。生産のプロフェッショナルであっても、輸出のプロフェッショナルではない。そのギャップを埋める人材がいなければ、日本の和牛は海外市場で勝負できない。
自社で輸出する、という選択
江田畜産は、商社を介さず、自社で直接輸出を行っている。バイヤーとの商談、契約、書類作成、物流手配、検疫対応 ―― すべてを社内で完結させる体制を構築してきた。これは日本の畜産業界では極めて珍しい形態だ。
商社に任せれば、手間は省ける。だが、商社を経由すると、バイヤーとの直接の関係が薄れ、価格交渉の主導権を失い、自社ブランドとしての存在感も弱まる。私たちが自社輸出にこだわるのは、生産者として、最終消費者に届くまでの全行程に責任を持ちたいからだ。
国の輸出戦略が後押しするのは、規模ではなく、本気で海外に出ようとする意志だった。
若いスタートアップが選ばれた意味
農水省の事業に採択される企業には、大手メーカーや歴史ある商社も含まれる。その中に、創業から間もない宮崎の畜産スタートアップが選ばれたことには、意味があると考えている。
日本の農林水産物の輸出額は拡大を続けているが、その担い手は依然として大手企業と商社が中心だ。しかし国が本気で輸出を拡大するなら、産地の生産者自身が輸出の当事者になる必要がある。規模は小さくとも、自社で輸出体制を構築し、実際に出荷実績を積み上げている ―― 江田畜産が採択されたのは、そうした「新しい輸出の形」が評価されたからだと受け止めている。
国のお墨付きを、次の一歩に
農水省の事業採択は、江田畜産にとってひとつの信用の証になった。海外バイヤーとの商談において、国の輸出推進事業に認められた企業であることは、具体的な信頼材料になる。特に、初めて取引するバイヤーに対して、日本政府が後押ししている事業者であるという事実は、交渉のテーブルにおいて確かな重みを持つ。
だが、採択はゴールではなく、出発点だ。この制度を活用して輸出体制をさらに強化し、より多くの国に江田和牛を届ける ―― それが、私たちがこの採択に対して果たすべき責任だと考えている。
宮崎の牧場から、世界の食卓へ。その道筋を、国とともに描いていく。
Eda Livestock Co., Ltd.
Miyazaki, Japan / 2025.02.01